傘マークが並んだ週の真ん中に思いがけず訪れた爽やかな晴天にソワソワして、オフィスで仕事に集中するのが大変な、万年「遠足前の小学生」体質のゾリラバです、こんばんは。
GWが終わってまだ1か月だというのに、旅に出たい気持ちが募りまくり。
かの偉大な松尾芭蕉も『奥の細道』の冒頭で「予もいづれの年よりか、片雲にさそわれて、漂泊のおもひやまず」と書いていますが、歳を重ねると旅心は募る一方ですわ。
ま、コロナで長いこと長距離移動を我慢をしてたから余計なのかもしれません。
ワンピース世界で冒険の海に出て行く奴らもきっとこんな気持ちなんだろうなー。
さて今日6月16日は、ルフィ達をビッグ・マム海賊団から逃すために自らの命を犠牲にしたモコモ公国くじらの森侠客団(ガーディアンズ)団長ペドロの誕生日です。
漢気が毛皮をまとったようなこのジャガーのミンクについては、これまでもあちこちで熱く語ってきましたが、誕生日に当たり、まとめも兼ねてがっつりキャラ語りをしてみようと思います。
ロジャーとの出会い
26年前、ロードポーネグリフを求めてゾウを訪れたゴール・D・ロジャーに、自分も海に連れて行って欲しいとねだった6歳の少年ペドロ。
その時のロジャーの言葉はこうでした。
いいか小僧!お前はまだ“待機”だ‼︎
人には必ず「出番」があるんだ
(“ONE PIECE”第878話)
その後まもなく海賊王となったロジャーの言葉は、ペドロの座右の銘となったようで、ロジャーの処刑後もペドロは来るべき自分の「出番」に備えていました。
そして光月おでんの死後ゾウに帰還したネコマムシから聞いたであろう「世界の夜明け」についての話が、ペドロを海へと駆り立てます。
ネコマムシの旦那の役に立ちたいと、ロードポーネグリフを探して海へ飛び出したペドロですが、世間知らずも手伝っていつの間にか賞金首に。
そこで「夜」という意味の「ノックス海賊団」を名乗るようになります。
ビッグ・マムに完敗
しかし5年前、足を踏み入れたビッグ・マムの縄張りで捕らえられ、相棒のゼポ(ハートの海賊団のベポの兄)を殺された上に、ペドロ自身も50年の寿命を奪われてしまいます。
当時ペドロは27歳。
「ノックス(夜)」という海賊団の名前や、もうほとんど寿命が残っていないことを揶揄するペロスペローに、ペドロがひとりごちるように語った言葉は、彼の生き様を端的に表していますね。
明けない夜は ないと言うだろう
ダンナ達の待つ『世界の夜明け』の礎となれるなら おれは本望だ
それくらいの時間はあるはず
(“ONE PIECE”第878話)
元々、最初にビッグ・マムから奪うとペドロに告げられた寿命は70年でした。
しかし、かつてのペドロの弟分であり、ビッグ・マム海賊団の幹部となっていたペコムズの涙ながらの嘆願で、60年に減らされました。
更に、「ここは自分の死に場所ではない、“世界の夜明け”のために自分は生きなくてはならない」と思っていたペドロは、自ら片目を抉り出して(痛い〜‼︎)ビッグ・マムに更なる減刑を交渉します。
ペドロの胆力に感心したビッグ・マムにより更に10年が減らされて、結局、奪われた寿命は50年。
つまりルフィ達と出会った時点で、ペドロは既に実質82年を生きたに等しい状況だったわけです。
強さと人柄の魅力
ビッグ・マムの前で見せた胆力に加え、タマゴ男爵と対等以上に渡り合う強さは、伊達にロードポーネグリフを擁するくじらの森の守護団長をやってないな、と思わせる実力。
更に、“月の獅子(スーロン)」を制御できず暴走するペコムズを唯一止められるというエピソードも、ペドロの強さと弟分からの篤い信頼の賜物でしょうね。
キャロットの適性を見抜き、強い戦士に育て上げたのもペドロでした。
その人柄は、義理堅く、普段は寡黙で慎重なのに、いざという時は味方も驚くほど勇猛果断。
ミンク族で唯一、ルフィ達に加勢することをネコマムシから認められたのも、ペコムズの抑えとしてだけでなく、ペドロの慎重さや戦闘力、経験値や覚悟が買われてのことでしょうね。
ついに回ってきた「出番」
ペドロが二度と戻らぬ覚悟でルフィ達と共に再びビッグ・マムの元に行ったのは、50年の寿命を失って長くは生きられないという厳しい現実もあったでしょう。
事実上の82歳では、いつ寿命が尽きてもおかしくありません。
だからこそペドロは、苦い思い出しかないホールケーキアイランドに再び出向くという決断をしました。
でもそれはペドロにとって、たぶん辛い苦渋の決断ではなかった気がします。
ルフィ達こそが、ネコマムシの旦那をはじめミンク族が数百年待ち続けた「世界を夜明けに導く者」だという確信。
待ち続けた自分にようやく「出番」が回ってきたという高揚感。
むしろそういったプラスの感情に満ちた覚悟だったのではないでしょうか。
一度ビッグ・マムに完膚なきまでに叩きのめされ大切なものを奪われたペドロは、ルフィ達一行の誰よりも警戒心と命を賭ける覚悟を持っていたでしょう。
他の全員が容易く信用したビッグ・マムの娘シャーロット・プリンを、最初からずっと警戒して疑っていたのもペドロでした。
ブルックがまんまとビッグ・マムが所有するロードポーネグリフの写しを入手できたのも、ペドロが囮となって多くの敵を引きつけたからです。
今思えばその時から、ペドロが体にダイナマイトを巻いていることは、読者に知らされていたわけですね。
そしてルフィ達一行が、命からがらホールケーキ城を脱出し海岸にたどり着いた時、ペロスペローによってブルックとチョッパーは飴で固められて窒息寸前、陸からはビッグ・マム、海からは大船団が迫り、頼みのサニー号も飴で固められてクードバーストどころか身動きすら取れないという絶体絶命のピンチに。
ペドロは動きました。
子供の頃から待ち続けた自分の「出番」を瞬時に悟って。
仲間に別れを告げる間もなく、愛弟子キャロットに後を託して。
ワンピースのヒーロー、ヒロインは、死の間際に笑顔を見せます。
人生に満足して死を逍遥と受け入れるのが本当にカッコいい。
ペロスペローを道連れに自爆する道を選んだペドロも例外ではありませんでした。
爆弾に吹き飛ばされても銃弾を浴びても人が死なない漫画と言われていた“ONE PIECE”で、リアルタイムで重要人物の死が描かれたのはエースに続いてペドロが2人目。
ペドロのビブルカードのプロフィールに当初「享年」の文字が無かった(のちに訂正)ことで、ペルのように生きていたらいいなぁとちょっと期待しましたが、その願いは叶いませんでした。
でもペドロ本人にしてみれば、おそらく最高の死に場所を得た気持ちだったと思います。
ペドロの行動がなければ、間違いなくルフィ達は全滅していたでしょう。
本人が長く望んでいた「世界の夜明け」の礎になれた。
寿命が尽きる前に、一世一代の大仕事を成し遂げた男が、最期に見せた笑顔に胸を打たれます。
ペドロが残したもの
ペドロの自己犠牲は、ルフィ達の命を救い、「世界の夜明け」への扉を押し広げました。
そしてその死は、無邪気なウサギのミンクの少女キャロットを本物の戦士に成長させたように思われます。
外の世界をみたいという好奇心と怖いもの知らずの冒険心から、こっそりサニー号に乗り込んだ幼いキャロットは、ペドロに「遊びじゃないんだぞ」と叱られても、ワクワクはしゃぐ気持ちが抜けていなかったように見えました。
ひょっとするとペドロの死の瞬間まで、彼の本当の覚悟を理解していなかったかもしれません。
あまりに突然訪れた頼れる兄貴分のペドロの最期は、キャロットに覚悟と分別と「世界の夜明け」のための戦いへの決意をもたらしたように思います。
カイドウ戦に決着がつき、ワノ国に仮に建てられていたペドロのお墓ですが、きっとゾウにも立派なものが建てられるでしょうね。
ペドロがいなかったら、ワノ国でのカイドウ戦の勝利もなく、ルフィのジョイボーイ覚醒をはじめとする「世界の夜明け」への扉は再び閉ざされてしまったはずですから。
霜月康イエやアシュラ童子、イゾウらワノ国での戦いに殉じた英雄と共に、ペドロの功績も長く記憶され讃えられることでしょう。